こんにちは! 講師の天満屋です。
2017年2月5日は「Creative Solution Awards -2016 4th Presentation—」の最終日でした。
特別審査員としてお招きした遠山正道さんの表彰式での様子をレポートします。
4回に渡ってお伝えしてきましたが、今回が最終回です。
(レポートを最初から読む場合はこちら)
各賞の発表と講評が済んだら、最後に全体への総評です。
壇上から学生に向けて語られた言葉を、ほぼそのまま書き起こしました。
学生だからできること
まず厳しめなコメントからいくと、全体の印象度は72点…68点…もっと低いかも。
みなさんはどう思いますか? OCHABIのブランドを背負ってるって言える?
自分自身も高い学費を払って、数年間、何しに来ていると思ってる?
今という時間は、すごく重要な、本当に大切な時間なんですよ。
会社に入ると分かることだけど、そこには責任やリスクがいつも当然あります。
私もビジネスをやっていて、スープストックでももちろんあるし、この間作ったレストランも一億円かかります。
ダメだともう赤字。それでまた銀行に行ったり。
最初はね、私も「NBO」と言って事業を始めたときは、親戚にお金を借りに行きました。
みなさんも、何かやるとなると、多分親戚にお金を借りることが多いです。
最初500万借りる、なくなっちゃった。今度はおばあちゃんに300万借りる、なくなっちゃった。
今度はおじいさんのところに行って「200万貸して」。
でも、学生ってそういうリスクないよね。今日展示されてたプロダクトの提案だって、別にそれで在庫が積まれてしまうわけでもないし。赤字を抱えてしまうわけでもない。
学生という時間はすごくいいチャンスなんですよ。社会に出てからの実践では、そんなことできないってことが、できる。
だから、思いっきりやって欲しいんだよね。本当に。
あと、せっかく校長先生や学校というブランドをあなたたちが体現しているんだから、恥ずかしいことは本当にやめてね。
うちでは、何かブランドをやるときにはみんなに「恥ずかしいことは本当にやめて」としか伝えないんです。
それは自分たち自身のことになって来るわけだから、当然だよね。
それからみなさんは、将来の後輩にとっての先輩になるわけだよね。
先輩として「自分たちがお金と時間と能力を費やしてやってきたことがこれだ!」ってものを示すだけの卒業までの時間はまだあるから、ぜひやりきって欲しい。
だってね、俺、学生とかなりたいもん。何も責任がなくて。本当に羨ましいです。
だからこれは苦言かもしれない。
今求められる「価値」とは何か
でも、みなさんの時代だなって思います。
私は慶應義塾大学を出て三菱商事という大きな会社に入って、今はちっちゃい会社をやっています。
でも今俺が一番興味があるのは「個人の引力」というもの。
20世紀は「経済の時代」、21世紀は「文化・価値の時代」と言われています。
では「価値」とは何かと考えたときに、経済みたいな大きな世界の話は既に終わってしまっていて、
今は、小さな価値をどれだけちゃんと提示できるか、という時代だと私は思っています。
我々は「スマイルズ」という会社なんだけど、会社を「会社です」なんて言ってたら、失くなっちゃうんですよ。
だからうちは、3年前から「会社」ではなくて「作家」としてやっています。
アーティストとして芸術祭に作品を出したりしているんですよ。その活動を通して「価値とは何か」を我々は問うているんです。
個人の引力
みなさんはアートやデザイン、クリエイションをやっている人たちでしょう?
だから「価値」を生む教育の場の真ん中にいるということは、僕にとってはすごく羨ましいことです。
それから「個人の引力」について。最近でいうと、『森岡書店』って聞いたことあるかな。
銀座一丁目の5坪で一冊の本を売る本屋というのをやっていて、うちが出資して一緒にやっているんですね。
お金のリターンは正直期待できるものではないんだけど、本当に新しい価値、新しい試みをやっているので、すごく今話題になっている。イギリスのガーディアン紙という経済紙が取材に来たり、フランスの『カルフール』という世界最大級の流通会社の役員がわざわざ来て、3時間インタビューしたり。
これを一人でやっているんだよ5坪で、一冊の本で。
これはどういうことかと言うと、リスクが少なくても、アイディアが鋭く尖って企画が突き抜けていれば、わざわざフランスから人が来るということです。
そこにあるのはクリエイティブと実行力です。あとは腹を決める。お金は全然ないんだけど。
オープンしたとき夏なのに店にクーラーがなくて、プレゼントを花束からエアコンに変えたくらいなんだから。
それでもちゃんと「価値」がある。
「価値」の見つけ方
ではその「価値」をどうやって見つけるのか、というと、一番簡単なのは「ダメなもの」を探すことなんです。
『Soup Stock Tokyo』もそうなんだけど、私が以前書いた本『スープで、いきます 商社マンがSoup Stock Tokyoを作る』の一行目は「なんでこうなっちゃうの?」という世の中の疑問やいらだちから Soup Stock Tokyo は生まれました、と書きました。
ダメなものって身の回りにたくさんあるでしょう? 家族や自分の家の周り、今ここにもあるかもしれない。
ダメなものがあったら、それを直せば「価値」になる。
学校の中のことだって「ダメだなこれ〜」と思うことがあったらそれはチャンス。
それを直せば絶対先生だって喜ぶし、学校がより良くなるじゃない。
自分も良いチャレンジができる。それをどんどんやっていくといい。
それを個人単位でやっていくと、さっきの藤原さん(遠山さんが特別審査員賞として選んだ出展者)のアイディアが面白かったのは、個人だったからだと思う。チームだからできることってたくさんあるんだけど、やっぱり一人だから企画がぬるくならない。
小さいからこそできる「価値」は、「クリエイティブ×何か」そういうものがこれから世の中でどんどん求められて行く
時代の中で、ドンズバで行けると思う。
大きいものって荷物になるんです。ブランドとかもそう。大きな会社とか入ると、身動きとれなくなっちゃう。
みなさんを見てると、とてもフットワーク軽そうだと感じます。
そのフットワークとクリエイティブをこれまで学んで来たはず。これからもそれが強みになる。すごく楽しみです。
ぜひ、学校での経験を無駄にしないで、これからやってくるチャンスにどんどんチャレンジして行って欲しいなと思います。
期待しています。
遠山正道さん、本当にありがとうございました!