【ENRICHING】デッサンは、自分の固定的なパターン情報を 意識的に広げるトレーニング。

第1 章 新しいリーダー論

デッサンでいう「モチーフ」というフランス語は、英語ではモチベイトです。つまり「動機(モチ―ヴ)」と訳せます。たとえばワイングラスをモチーフにデッサンするとは、ワイングラスを描くことではなく、「ワイングラスを動機」として、ワイングラスが置かれているテーブルやその上に敷かれている布やワイングラスに反射する奥まったところにある窓からの光や、その怒りが生み出す影や、その部屋に満たされた空気感を、今自分がどのように感じているかを描くことです。

つまりデッサンは、ワイングラスを切っ掛けとして、自分が見ているワイングラスを囲む「多くの情報を観察する情報インプット」の優れたトレーニングになります。この世界を詳細に観察する人類の歴史がアートの歴史であると考えることもできます。

ラスコーやアルタミラの洞窟壁画は、大きな狩猟対象の動物ばかりが描かれていて、狩猟のための祈りや方法などの情報交換のために描かれているという説が有力です。人物を忠実に描こうとした写実の時代は人物の肌の質感をどのように情報として捉え描くかに全力を投入しています。またダ・ヴィンチは空間を遠近法で描き立体的なこの3次元世界を、どのように2次元に表すかに全生涯を捧げています。印象派は人の心を揺さぶる印象的な情報をセグメントして、光があふれるこの世界を2次元に表現しようとしました。

アートは、自分の意識を広げる発想に溢れた「情報=視点=考え方の宝庫」と捉え直すことができます。

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