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類推に適した西洋型思考法と試行錯誤(ブリコラージュ)の東洋型思考法レヴィストロ-スが語ったブリコラージュと同じ言葉が、日本にもあります。石庭で有名な龍安寺に刻まれている「吾、唯、足るを知る」というコンセプトです。これは何か新しい物を手に入れなければ悟り(人生の真理)を得られないという、常に不足感に満たされた考え方は間違っているという主張です。正解は、すべては地球によって「すでに準備されている」、答えは遠い未来ではなく「今にある」という思考法です。元々日本の思考法としては「満ちること」を非常に嫌う傾向が強くあります。満ちることは「盛者必衰の理」からすると、「頂点を極めたのだから次には必ず衰退していくという原理」に則っているということです。弘法大師も「陰陽和合万物生々流転」の原理を語っています。陰陽の和合で新しい生命は生まれるが、それらは必ず変化し続け、やがては滅するという「命の法則」に則っているという思考法です。この思考法の起源はゴータマシッダールタ(釈迦)が修行を否定したときに生まれました。何かを得ようと、まだ来てもいない未来ばかり見て修行するのではなく、すべての答えは「今」に用意されている。すべては「今に満ちている」という発想です。多くの人々はその「ことわり」に気づいていない。先ず今ある満たされた全てに気づき感謝すれば、苦しみの考え方から脱却できるという主張でした。この思考法の到達点は「地球がなくなれば、人類は争いも起こせない」という単純な事実に至ります。
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