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アートの読み解き19 世紀~20 世紀(2)マルセル・デュシャンにはフランス人らしいブラックな視点があります。印象派以降のアートがどんどん主観化していく中で、それならアートは「アートを創ろうとしなくとも、すでに世の中に準備されている」というレディ・メイドの視点です。自分のアート的な目がありさえすれば、たとえ男性の便器でも美しいフォルムをしていると考えていました。デュシャンは実際に自分が審査員を務めるアート展に男性の便器を出展し、「泉」というフランス語のタイトルを付けました。車や缶詰など日常品の大量生産が現実化したアメリカで、ポップアートの旗手と呼ばれたのがアンディ・ウォーホルです。レディ・メイドをさらに進化させたウォーホルは、みんなが日常的に使っている消耗品の中からもアートが生まれるというような視点を提案したように思えます。キャンベルスープの缶詰はスーパーで毎日見ることができるし、マリリン・モンローも映画でよく見ることができます。しかしウォーホルの目と手を通過すると確かに誰も見たことのないアートになっているわけです。

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